「毛利法王様が、俺を見付けてくれなかったら、俺はいまごろ雪に埋もれて死んでたよ。5歳くらいだったそうだ。だから、俺今何才なのか正確にはわからないんだ。セイジより確実に年下だろうけど」
「私より年上だったら当麻は人間ではないな。我が魔性一族のリストに名が乗る筈だ」
「法王様には、ナアザ様というおつきの人がいて、その人が俺を立派な施設につれていってくれた。
毛利様の手紙や、贈物はいつもその人が直接持ってきてくれた。
初めはよくわからなかったんだけど、毛利様はその時次の法王になることが決定していて、俺に構っている暇なんかなかったんだ。
それなのに、まるでいつも側にいるかのように連絡をくれた。
ナアザ様はたまには会いにつれていってくれたし。
けど、けどさ、俺ってひねくれてたから、だんだん、感謝の気持ちが素直に表せなくなってさ。
反発ばかりしてた。教会の教えなんてすぐ忘れるし、聖職者にもならなかったし。
…貴族たちにだいぶ言われたんだ。
法王の秘蔵っ子は恩知らずだ、神の教えを軽んじているってさ」
「その通りだと思うぞ。それが証拠に、当麻は今、法王モウリのいる大聖堂の天敵、魔物とくらしている」
「ああ。これが毛利様に知れたら、なんか、申し訳ない」
「出ていきたくなったのか」
「いや、そうじゃないけど。意地悪だなっ。俺はここにいるんだってば。毛利様には、だから信仰心じゃなくて、ハンターとしての実力で恩を返してきたんだ」
「魔物狩りか。しかし当麻。結局、ミイラ取りがミイラになってしまっているな」
「そうなんだよなあ…。セイジのせいだぞっ」
「私のっ?」
「セイジが他のやつらみたいに、あの分別のない狼男とか、ゴーストたちのようだったら、俺はさっさとお前を退治して、街へ帰っていたんだ」
「モウリの所へか」
「…だめだよ、セイジ。俺は、どうしたってあの人を忘れられない」
「…かまわん。今は、こうして、ここにいるのだから」
「寝言で毛利様の名を呼んでも?」
「今に私の名を呼ぶようになる」
「ばっ、なっ…に、恥ずかしいこと言ってるんだよっ」
「今更恥ずかしいも何もあるものか。これからさき、お前の寝言を聞くのも、顔を見るのも、私だけだ。ずっと、死ぬまで…」
「…死ぬまで?」
「もう黙れ…」
終
5今君のためにへ