雪の日


碧爽 深


「当麻!なんだ、窓を開けているのか。降出してずいぶんたつというのに、部屋中冷えきっているではないか。どうした。何を見ている。空か?」
 征士、当麻の横から窓外を見やる。そこには暗い空と降ってくる灰色の雪。
「雪が珍しいのか?明日の朝にはあたり一面銀世界になっているだろう。湖も、きっと氷が張っている。…当麻?寒くないか」
 征士、当麻の肩に手を回す。すっかり冷えているのに驚いて、窓を閉める。それから暖房のスイッチを入れ、当麻を振り返る。
「当麻?」
 当麻、窓べからじっと征士を見ている。
「どうした」
 征士、立ったままの当麻に歩み寄る。
「当麻」
 正面に立つと、当麻がもたれかかってくる。
「何だ、眠いのか」
 表情は征士から見えない。
 当麻、それを知っててぺろっと舌を出す。
「当麻?」
 征士、動かない当麻の後頭部をこつんと叩く。
「て」
「こら」
「う〜〜」
 当麻、征士の肩口に顔をぐりぐり押し付ける。
「なんだ一体」
 征士、押されながら倒れそうになる。
「当麻」
「ふーんだ」
「そんなことをするとこうだぞ」
 征士、当麻の体に腕を回し締め付ける。
「〜〜」
 当麻、こらえられなくなって体を引き剥がそうとする。
「だめだ」
 征士、なお抱き締める腕に力を込める。
「んっ、ば、馬鹿ぢか…」
 征士、くすりと笑う。
「わ、わるかっ…止めろ…」
 征士、すうっと力を抜く。
 当麻、浅い呼吸を繰り返して、よろめく。
 征士、離れかけた当麻の腕を取る。
「寒いか?」
 当麻、まだ呼吸を整えている。
 征士、ゆっくり顔を近付けて……。

   終

2白い記憶

 

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